立喰師列伝
なんとなく出かけて、やってきたバスに乗り込んだら、渋谷に着いた。
ふらふらし歩いていたら映画「立喰師列伝」をやっていた。大変に運が良いというか、巡り会わせが良かった。
まず興味深いのが、実写を影絵のように構成する手法である。そして実写パートでは、樋口真嗣や鈴木敏夫といった素人が出演している。ただ、声は声優が当てている。
これについて、興味深いのが、宮崎駿とのまったく逆の性向である。
宮崎監督の考えは明らかに「絵が良ければ声優はどうだって良い」である。木村拓哉を起用するあたりがそうだ。
押井監督は逆で、「素人が出ても、後でどのようにでもお気に入りの絵に出来るのだから、絵が不十分でも音楽と声優が大事」ということなのだろう。
これは宮崎作品の見通しの良い絵作りと、押井作品の色を減じた薄暗い雰囲気との対比にもつながる。
さて内容は、「立喰師」という虚構を通じて戦後史を再構築しようというものである。その視点は、監督の安保闘争の経験が色濃く出ている。7割以上がナレーションで構成される上に、独特の説明口調であるため、いびきをかいている人もいたが、大変に楽しく見ることが出来た。
常日頃から言ってきているのだが、安保闘争に参加した世代はその頃の自慢をするばかりで、何も生み出さなかった。彼らはむしろ、否定した資本主義・帝国主義にまみれて働いてきた。その結果、膨大な赤字国債と倦怠感を後ろの世代に残して、自分たちはリタイアしようとしている。
自分たちのしたことを振り返らない安保世代に苛立ちを覚えているという点で、はっきりと共感を覚えることが出来た。
また、変形した外食産業論になっている点でも楽しめる。結局は「システム」という歯車に取り込まれていく世間と、それに抗おうとする「立喰師」との戦いという必然的な視点になる。
渋谷シネクイントで、15:15/17:20/19:30という変則的な上映時間である。
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